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オール怪談32【夜の河霧】 

オール怪談32   オール怪談32-口絵
オール怪談32  【夜の河霧】
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(S37/7)掲載作品

・俺の顔が笑う時(いばら美喜)
・夜の河霧(小島剛夕)
・スペードの女王(北風三平)
・ある決闘(古賀しんさく)

画像はマンチュウ様提供(『漫画図書館青虫』にて撮影)



 「ああ 今宵も私は来てしまった・・・あったとてどうにもならぬ逢う瀬としりながら・・・」
でも・・・でも・・・そのお方がこの世に生なき夜霧の精であろうと、怖ろしく哀しい運命の待つ身の上なればこそ・・・まごころ捧げて悔いはなかった・・・。

信州の山深い里に霧降村というところがあった。里を流れる音無川には霧の深い夕暮れ時、美しい若衆の姿をした夜霧の精が現れ里の娘を招き寄せては狂わせてしまうという言い伝えがあった。

この里を治める夕霧城の城主には美しい舞姫という一人娘がいた。15歳の誕生日の祝いに新しい館を贈られた舞姫は庭を散策する内にいつの間にか音無川の河原に出てしまう。あたり一面芳しい金雀児の花が咲き乱れていた。そして舞姫は河霧の精といわれる若小姓に出会う。

乳母から物の怪と聞かされても舞姫は河霧の精に心惹かれて行く。そこへ舞姫の縁談が持ち上がった。相手は夕霧城の数倍の勢力を持つ隣国の山伏城の若君。しかしその若君は城の奥深く隠れ住まねばならない不治の病に侵されていた。舞姫の美しさを伝え聞き妻にしたいと申し入れてきたのだ。

夕霧城主は決戦も辞さぬ覚悟を決めたが、舞姫はそんな父をなだめ自ら輿入れをする覚悟を決める。そして最後の思い出にと音無川の河原を訪れる。二度と会えないであろう若小姓にせめての真心を伝えるために・・・。

舞姫の涙の理由を知り、どんなことをしても姫を幸せにすると心につぶやく若小姓・・・果たしてその決心とは!?

不治の病の若君ゆえ、輿入れの祝い事も無く、ひっそりと隠れ住む地下へと案内される舞姫。そこには顔を頭巾で隠し、手にも包帯を巻いた若君が待っていた。不憫な息子のそばにせめて美しい花を置いてやりたいという山伏城主の親心だった。

舞姫に恋焦がれ、心の妻と思い暮らしてきた心情を訴える若君に舞姫は深く心を動かされる。「それほどまでに私を・・・。」舞姫は若君に近づき、「わが夫となられるお方、いといはしませぬ。」そう言って顔を見せて欲しいと頭巾に手をかけた。その顔は・・・!!!

その頃、音無川の河原に病に朽ち果てた一つの屍があったことを舞姫も若君も知らない・・・。

この作品は「怪談82/S40・10」に再録されています。

なお、昭和44年8月28日発行「週刊漫画アクション」に同じ題名で書き直されています。昭和46年9月1日発行「ベストコミック」にその書き直しの作品が再録されています。

舞姫と若君の二人にとっては最高のハッピーエンドではありますが、なんとも切ないお話です。頭巾の下から現れた顔は「河霧の精」その人だったのです。誰が活けたのかそばには金雀児の花が芳しい香りを放っていました。音無川の屍は・・・いうまでもありません。河霧の精の命を賭けた恋の証が若君の病を治すことでした。「この花のよい香りが私から病をぬぐい去ってくれたのだ。」若君の言葉を聞きながら「いや、ちがう・・・ちがうわ・・・。」そうつぶやく舞姫の言葉が河霧の精にとっての救いでしょうか。
オール怪談 | TB(0) | CM(0) [ 2007/07/04 15:43 ]
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Author:風かをる
その旅は昔々店じまいをした貸本屋さんから譲っていただいた数冊の「長篇大ロマン」から始まりました。
小島剛夕作品に魅せられてン十年。果てしない探求の旅が続いています。

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