「朝顔日記」 昭和37年7月
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典型的なすれ違いの悲恋物語です。もっとも最後は幸せな未来を予想させる結末にはなっていますが・・・。宇治の蛍狩りで知り合った深雪と阿曽次郎。運命は二人を結びつけまた引き離します。中江藤樹に師事しめきめきと頭角を現した阿曽次郎は名も熊沢蕃山と改め池田藩主のお声がかりで深雪との縁談が持ち上がります。
熊沢蕃山が阿曽次郎とは知らず、深雪は家を抜け出し阿曽次郎を追ってさすらうことになります。しかも逃げ出す途中で目を痛め、とうとう失明してしまいます。見えないことがまた新たなすれ違いを生みます。まして熊沢蕃山は深雪が自分から逃げ出し横恋慕をしていた伊丹弥十郎と駆け落ちをしたと思いこんでいるのです。
伊丹弥十郎は深雪とのいきさつもあり、熊沢蕃山の暗殺を承諾します。果たし合いになったところで二人は深雪を巡る全ての事情を知ります。伊丹弥十郎は最後に深雪の幸せを願い熊沢蕃山を逃して斬り死にします。剛夕作品に時々登場する損な役回り・・・今回は弥十郎・・・でもなかなかニヒルで存在感のある人物です。こういう役者がいてこそ美男美女の主役が引き立つというものです。こういう存在作りの上手な先生でした。
Author:風かをる
その旅は昔々店じまいをした貸本屋さんから譲っていただいた数冊の「長篇大ロマン」から始まりました。
小島剛夕作品に魅せられてン十年。果てしない探求の旅が続いています。