小島剛夕特集号
次に紹介する五冊の本は、いずれも小島剛夕の単行本として出版された。 その中身は、書き下ろし新作一編と、過去に発表した短編一つと、そして、他の作家によるゲスト作品の計三編から成る短編集であり、長編作品の単行本ではない。 だから本来ここで紹介する必要はないのだが、誤解を避けるため、本としての紹介だけはすることにした。 掲載された小島作品の詳細については、いずれ短編作品を紹介する際にきちんと述べるので、あらすじは割愛した。 ご了承願いたい。 また、ページ数については、短編集という性格上、広告なども含めた総数を初めに記し、その後で収録された個々の作品のページ数を記した。

◇黒百合城
(解題)
つばめ出版発行。 124ページ。 昭和38(1963)年9月頃に短編誌『怪談』の別冊として出版された。 『書籍雑誌卸月報』には同年の8月号に出版広告が載っているのを確認。 黒澤明監督の映画「蜘蛛巣城」から影響を受けた表題作「黒百合城」(51ページ)は、新作書き下ろしの中編怪談。 この他に、小島による旧作「おぼろ影」(40ページ)と、鈴木洸史によるゲスト作品「白狼の里」(40ページ)を併載。 「おぼろ影」は時代劇短編集『忍法帖』第7号(ひばり書房)に掲載されたものを再録。 鈴木洸史作品「白狼の里」が書き下ろしなのか、あるいは、過去作品の再録なのかは、今のところ不明である。

◇笛吹川
(解題)
つばめ出版発行。 136ページ。 昭和39(1964)年2月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』には同年の2月号に出版広告が載っているのを確認。 表題作の「笛吹川」(40ページ)は、短編誌『オール怪談』第6号(ひばり書房)に掲載されたものを再録。 巻頭に掲載の「紅ばらの里」(49ページ)は、新作書き下ろしで、女忍者おぼろが登場。 他にゲスト作品として、いばら美喜の「舌切り雀」(38ページ)を併載。 いばら美喜作品が新作なのか、過去作品の再録なのか不明。

◇湯島妻恋坂
(解題)
つばめ出版発行。 136ページ。 昭和39(1964)年4月頃に出版された。 表題作の「湯島妻恋坂」(39ページ)は新作書き下ろし。 「羅生門」(52ページ)は、『怪談別冊時代特集』第5号(つばめ出版)に掲載されたものを再録。 他にゲスト作品として、いばら美喜の「指笛」(38ページ)を併載。 いばら美喜作品が新作なのか、過去作品の再録なのか不明。

◇女忍まんだら
(解題)
つばめ出版発行。 136ページ。 昭和39(1964)年5月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』には同年の4月号に出版広告が載っているのを確認。 表題作の「女忍まんだら」(67ページ)は、新作書き下ろしで、女忍者おぼろが又もや登場。 「影武者」(34ページ)は、『怪談別冊時代特集』第8号に初出掲載されたものを再録。 他にゲスト作品として、藤咲のぼる(=いばら美喜)の「惨忍」(30ページ)を併載。 藤咲作品は、『忍法帖』第4号に初出掲載されたものを再録。

◇祇園囃子
(解題)
ひばり書房発行。 136ページ。 昭和39(1964)年7月頃に短編誌『オール怪談』の別冊として出版された。 表題作の「祇園囃子」(50ページ)は、新作書き下ろしで、新撰組隊士・沖田総司の悲恋を描いた中編。 併載の「わだつみは愛(かな)しからずや」(41ページ)は、『怪談』27号に初出掲載されたものを再録。 他にゲスト作品として、関すすむの「烏(ガラサ)」(40ページ)を収録。 関すすむの作品が新作なのか、過去作品の再録なのか不明。