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【連載第63回】小島剛夕長篇大ロマン51 血太郎あらし 

51 血太郎あらし

(解題)
つばめ出版発行。 本編118ページ。 昭和42(1967)年4月頃に出版された。 「小島剛夕長篇大ロマン」シリーズの実質的な最終作である。 後編はついに描かれなかった。 卑劣な父を斬ろうと決意した若い武士の回想で物語は進み、母との悲しい生活、粗暴で冷酷な父との冷え切った関係、そして、美しい娘との淡い恋が、テンポ良く綴られる。 なぜ父親は主人公に冷たく当たるのか、それが物語の核心部分であるはずなのだが、未完で打ち切られたため、一切不明。 消化不良の感覚がいつまでも尾を引く非常に残念な一作。

(あらすじ)
千太郎の父、如月弾正は、親友の明智光秀を卑劣にも裏切った。 そのため、光秀は羽柴秀吉に敗れ、敗走の途中土民の手にかかり死んだ。 竹馬の友を保身のために裏切った父を許せない千太郎は、父を殺す決意を固める。 故郷へ帰る道すがら、千太郎は、これまでの自分の人生を振り返る。 父・弾正の異常なまでの冷たい仕打ち、病弱な母との人質櫓での生活、忍びの剣を教えてくれた弥平次のこと、美しい娘・阿久里との悲恋など、様々な思い出が千太郎の脳裏に蘇る。 父はなぜ母を櫓に押し込め千太郎に辛く当たったのか。 その謎を問い質すため、卑劣な裏切り者を斬るため、その裏切り者の血が流れている自分の命を絶つため、千太郎は忌まわしい故郷への帰路を急ぐのだった。

(補足/by風かをる)
この作品の後編は発行されませんでしたが、後編の表紙絵が存在します。(6枚目の画像/西村つや子氏提供) 予告編が掲載され、表紙絵まで完成していての未発行。 成瀬氏が書かれているように消化不良が半端なかった風かをるです。 

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【連載第62回】小島剛夕長篇大ロマン50 幽鬼の城 

50 幽鬼の城

(解題)
つばめ出版発行。 本編103ページ。 昭和42(1967)年3月頃に出版された。 ある城に纏わる前城主の呪いと、その前城主に抜け道作りを任された築城師の執念が、多くの人の命を吸って、恐ろしい結末に到るまでを描いた怪奇編。 さて、この「幽鬼の城」は、過去に発表された二つの短編作品をリメイクしたものだ。 一つは貸本短編誌『怪談』第9号(つばめ出版)に掲載された「ある城主の死」。 もう一つは、貸本短編誌『怪談別冊時代特集』第12号に掲載された「鬼門櫓」。 自刃して非業の死を遂げた前の城主の呪いの部分は、「ある城主の死」から構想を得ており、櫓の下に隠された抜け道を完成させようとする築城師の狂気の行動は、「鬼門櫓」で語られるストーリーとほぼ同じである。 また、「幽鬼の城」は、「小島剛夕長篇大ロマン」シリーズのために新たに書き下ろされた作品ではなく、過去に発表された別タイトルの作品を改題再録した可能性がある。 実は、この本が出版される前年の昭和41(1966)年の秋に、少年画報社発行の『週刊少年キング』誌上で「鬼門やぐら」という題名の作品が短期連載されているのである。 残念ながら、私はこの「鬼門やぐら」を今まで読んだことがない。 だが、『週刊少年キング』の「鬼門やぐら」もおそらく貸本時代に描かれた「鬼門櫓」のリメイクだろうから、この本の出版時期を考えると、改題して再録したとしても不思議ではない。 さらに、この「幽鬼の城」自体が青年誌でリメイクされている。 リメイク版の「幽鬼の城」は、双葉社発行の『週刊漫画アクション』昭和44(1969)年6月26日号に掲載された。

(あらすじ)
前の城主が謀反の疑いで自刃してから二十年後、新しい城主は城の改築工事を命じた。 工事の指揮を執ったのは、築城時に設計と工事を担当した築城師の黒阿弥だった。 名人と呼ばれる黒阿弥の城作りは奇抜だった。 不吉とされる鬼門の方角に櫓を建てたのである。 「鬼門やぐら」と人々が気味悪がるその櫓の工事だけは、黒阿弥は自分以外の誰にも手をつけさせなかった。 ある日、藩を揺るがす大事故が起きた。 若君が崩れた石垣の下敷きになって死んだのである。 この日から、城内のあちこちで奇怪な事件が多発する。 ある者は死に、ある者は発狂した。 公儀隠密の錦吾は、怪事件の原因は「鬼門やぐら」にあると睨むが…。

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(補足/by風かをる)
週刊少年キング/鬼門やぐら』、『怪談別冊時代特集12/鬼門櫓』、『怪談9/ある城主の死』につきましてはリンク先の【探求日誌】を参考にしてください。
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 プロフィール

風かをる

Author:風かをる
その旅は昔々店じまいをした貸本屋さんから譲っていただいた数冊の「長篇大ロマン」から始まりました。
小島剛夕作品に魅せられてン十年。果てしない探求の旅が続いています。

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