51 血太郎あらし
(解題)
つばめ出版発行。 本編118ページ。 昭和42(1967)年4月頃に出版された。 「小島剛夕長篇大ロマン」シリーズの実質的な最終作である。 後編はついに描かれなかった。 卑劣な父を斬ろうと決意した若い武士の回想で物語は進み、母との悲しい生活、粗暴で冷酷な父との冷え切った関係、そして、美しい娘との淡い恋が、テンポ良く綴られる。 なぜ父親は主人公に冷たく当たるのか、それが物語の核心部分であるはずなのだが、未完で打ち切られたため、一切不明。 消化不良の感覚がいつまでも尾を引く非常に残念な一作。
(あらすじ)
千太郎の父、如月弾正は、親友の明智光秀を卑劣にも裏切った。 そのため、光秀は羽柴秀吉に敗れ、敗走の途中土民の手にかかり死んだ。 竹馬の友を保身のために裏切った父を許せない千太郎は、父を殺す決意を固める。 故郷へ帰る道すがら、千太郎は、これまでの自分の人生を振り返る。 父・弾正の異常なまでの冷たい仕打ち、病弱な母との人質櫓での生活、忍びの剣を教えてくれた弥平次のこと、美しい娘・阿久里との悲恋など、様々な思い出が千太郎の脳裏に蘇る。 父はなぜ母を櫓に押し込め千太郎に辛く当たったのか。 その謎を問い質すため、卑劣な裏切り者を斬るため、その裏切り者の血が流れている自分の命を絶つため、千太郎は忌まわしい故郷への帰路を急ぐのだった。
(補足/by風かをる)
この作品の後編は発行されませんでしたが、後編の表紙絵が存在します。(6枚目の画像/西村つや子氏提供) 予告編が掲載され、表紙絵まで完成していての未発行。 成瀬氏が書かれているように消化不良が半端なかった風かをるです。

