42 加茂川ちどり
(解題)
つばめ出版発行。 本編130ページ。 昭和40(1965)年6月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』には同年の5月号、6月号に出版広告が載っているのを確認。 小島剛夕お得意の幕末もの。 佐久間象山暗殺で有名な「人斬り彦斎」こと河上彦斎が主人公。 彦斎を中心に、偶然出会った彦斎に恋心を抱く人形問屋の娘・由貴、彼女に想いを寄せる人形師の田之助、そして由貴と瓜二つの樵の娘マキ、といった多彩な登場人物が織り成す恋模様を時に激しく時にもの悲しく情感たっぷりに描く。 史実とはかなり違う設定がいくつも見られるが、作者の自由な想像力の産物として読むべきで、いちいち気にしてはいけない。 瓜二つで実は双子の姉妹である由貴とマキのエピソードは、川端康成の名作小説「古都」から多大な影響を受けていることも記しておく。
なお、この作品は、後に「白い暗殺者」というタイトルで内容を短縮してリメイクされ、『コミックmagazine』昭和42(1967)年9月号増刊に掲載された。 また、『別冊漫画アクション』昭和44(1969)年1月号に掲載された「幕末哀譜・悲剣しぐれ」も、扉絵の雰囲気からこの『加茂川ちどり』のリメイクではないかと思われるが、こちらは本編を読んだことがないので、確信が持てない。
(あらすじ)
幕末の京都が舞台。 「人斬り彦斎」こと河上彦斎は新撰組に追われていた。 川船に隠れて難を逃れた彦斎はそこで人形問屋の娘・由貴に出会う。 勤王派の人斬りと美しい商家の娘。 およそ幸せになれるとは思えぬ間柄であったが、二人は程なく恋に落ちた。 以前より由貴に想いを寄せていた腕の良い人形師の田之助は、彦斎と由貴の行く末を案じる。 しばらくして、新作の人形に使う良質の木を求め北山を訪れた田之助は、そこで貧しい樵の娘・マキと出会う。 マキは、驚くほど由貴に生き写しであった。 その頃、由貴は血なまぐさい運命から彦斎を救おうと努力していた。 しかし、時流はそれを許さず、要人・佐久間象山を暗殺した彦斎は、勤王・佐幕双方から命を狙われることになってしまう。
(補足/by風かをる)
「解題」にある「幕末哀譜・悲剣しぐれ」は間違いなく『加茂川ちどり』の描きなおし作品です。


