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【連載第48回】小島剛夕長篇大ロマン36 木戸は開かれた 

36 木戸は開かれた

(解題)
つばめ出版発行。 本編128ページ。 昭和39(1964)年7月頃に出版された。 幕末から明治維新、そして、文明開化という激動の時代が舞台。 同じ女を愛してしまった兄弟の葛藤を描く。 結末のために必要な展開ではあっても、記憶喪失のヒロインの過去が終盤になって取って付けたように明かされるのはいただけない。 語りのテンポも悪く、主人公たちの優柔不断さに思わずじれったくなる。 全力を傾けた「純愛忠臣蔵シリーズ」の合間に発表されたためか、低調な出来である。

(あらすじ)
十三夜の月が美しいある夜のこと。 旗本・風間家の門前に美しい娘が倒れていた。 過去の記憶を一切失っていたその娘を風間家は引き取り、十三夜にちなんでその娘を「十三絵(とみえ)」と呼ぶことにした。 風間家には腹違いの兄弟がいた。 兄の伊織は、無口な学者肌。 弟の絃太郎は、陽気な行動派であった。 やがて二人は十三絵のことを女として意識して、ともに彼女を深く愛するようになる。 だが、時は幕末。 風雲急を告げる時代の激流は、三人の感情を否応なしに押し流し、悲劇を生むのであった。

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【連載第47回】小島剛夕長篇大ロマン35 お軽と勘平 

35 お軽と勘平(純愛忠臣蔵シリーズ)

(解題)
つばめ出版発行。 本編128ページ。 昭和39(1964)年6月頃に出版された。 昭和39年と言えば、NHK大河ドラマの第二作「赤穂浪士」が放送された年でもある。 その人気テレビドラマに挑戦するかの如く、小島剛夕が全力を傾注して描いたのが、「純愛忠臣蔵シリーズ」全六作だ。 その第一作は、あまりにも有名な「お軽と勘平」のお話である。 最初から100ページ目までは、お軽と勘平の初々しい恋が浅野内匠頭とその妻・阿久利の夫婦愛と対比して描かれ、江戸城内松の廊下の刃傷へと至る。 その後は、人形浄瑠璃・歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」の五段目と六段目のストーリーをほぼ忠実に描いている。 もちろん、猪と定九郎も登場する。 なお、この作品は、「純愛忠臣蔵シリーズ」全六作の中で唯一再録もリメイクもされていない。

(あらすじ)
参勤交代の途次、山崎街道のとある桜の木の下で休息を取る主君・浅野内匠頭のために、家臣の早野勘平は近くの漁師の家に白湯を求めた。 すると出てきたのは貧しい漁師の家庭に似合わぬ美しい娘だった。 娘は名をお軽といった。 内匠頭はお軽の作った「さくら湯」をたいそう気に入り、勘平は面目を施した礼をお軽に告げた。 その日から、お軽と勘平の心にはお互いの面影が宿り二度と消えることはなかった。 二人は恋に落ちたのである。 翌年の春、浅野家の行列がお軽の家の近くを通った時、内匠頭はお軽の作る「さくら湯」を再び所望した。 休息を終えて行列が出立する際、勘平はお軽に「来年元服したら、そなたを迎えに来たい」と告げる。 だが、貧乏に窮したお軽の父は、代官のもとへ腰元として奉公に出してしまう。 そして代官が在藩明けで江戸へ帰ると、お軽もまた江戸へ一緒に発ってしまった。 それを聞いた勘平は酷く落胆するのだった。

ある日、お軽は浅野家江戸屋敷を訪ねた。 すると勘平は国許の赤穂にいて江戸にはいないという。 気を利かした家中の者が主君・内匠頭に取り次いで、お軽は内匠頭と再会する。 お軽の勘平への想いを察した内匠頭は、お軽を浅野家に引き取り、国許にいる勘平を呼び寄せる。 再会を喜ぶお軽と勘平。 二人は内匠頭の優しさに深く感謝する。 だが、時をほぼ同じくして、内匠頭には幕府から勅使御饗応役の命が下っていたのである。

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風かをる

Author:風かをる
その旅は昔々店じまいをした貸本屋さんから譲っていただいた数冊の「長篇大ロマン」から始まりました。
小島剛夕作品に魅せられてン十年。果てしない探求の旅が続いています。

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