34 清姫絵巻
(解題)
つばめ出版発行。 本編127ページ。 昭和39(1964)年4月頃に出版された。 題名からも分かる通り、いわゆる「安珍・清姫伝説」と、それを題材にして作られた能楽の「道成寺」、歌舞伎の「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」などを基にして作られた作品。 伝説では恋心を裏切られた清姫は蛇に変化するのだが、小島剛夕は大胆にも清姫を白鷺の化身として描き、全編を哀切極まるファンタジックな純愛ものに仕立て上げた。 この作品は「安珍・清姫伝説」から設定と名を借りた「葛の葉狐」あるいは「人魚姫」の翻案と思えば分かりやすいだろう。
(あらすじ)
平安時代のことである。 藤原氏一門の御曹司・道安は、鷹に襲われた一羽の白鷺を助ける。 恩に着たその白鷺は、美しい人間の娘に変身し、舞妓となって道安の前に現れる。 道安は清と名乗るその舞妓の美しさに感嘆し、二人はすぐに恋に落ちる。 しかし清は白鷺の化身であって、人間ではない。 それは所詮叶わぬ恋であった。 清姫が白鷺である事実を知って、道安は出家する。 僧門に入り安珍と名を変えた道安。 だが、彼のことを諦められない清姫はその後を追って各地を放浪するのだった。


