29 万華地獄(小島剛夕・名作劇場3)
(解題)
つばめ出版発行。 本編148ページ。 昭和38(1963)年10月頃に出版された。 『書籍雑誌卸月報』では9月の出版予定。 本文扉のタイトルでは「萬華地獄」となっている。 幕末の井伊家を二分する跡目争い。 兵道の呪殺修法によって井伊直弼とその息子を調伏せしめんと企てる一味に戦いを挑んだ忠義の武士・木暮泉之介の悲惨な巡り合わせを描く。 多くの登場人物を配した波乱万丈の物語は、呪殺の怪奇色も加わって、興趣が尽きない。
(あらすじ)
彦根藩士・木暮泉之介は、ある日、兵道の師である諸木玄庵とともに、琵琶湖に浮かぶ小島に奇怪な呪殺修法の祭壇を発見する。 それは玄庵のかつての弟子多門寺蒼風が、井伊直弼の家督相続を快く思わない於蓮の方と謀って、直弼とその息子を調伏すべく祈った跡であった。 お家の内紛を収めるため、忠義の士・泉之介は江戸へ向かった。 泉之介は、直弼の学友・坂本竜馬の協力を得て、直弼呪詛の証拠を手に入れるが、反直弼派の上役の反感を買ってしまう。 陰謀と内紛の嵐は、泉之介の両親を死に至らしめ、泉之介自身も乱心者として追われる立場となる。 そして悲運はさらに重なり、今度は泉之介の妹雪絵の身に災難が降りかかる。

