8 ふり袖狂女
(解題)
つばめ出版発行。 本編128ページ。 昭和36(1961)年12月頃に出版された。 この作品から表紙絵・背表紙に「怪談」の二文字が記されなくなった。 主人公の男女の名前がお夏と清十郎であることから、井原西鶴「好色五人女」、近松門左衛門「五十年忌歌念仏」、坪内逍遥「お夏狂乱」などで有名ないわゆる「お夏清十郎」のお話なのかと思いきや、お夏が狂う以外は全く違うストーリー。 幕末を舞台にした激しい流転の大メロドラマである。
(あらすじ)
土佐藩士相良清十郎は、瀬戸内海に面したとある岬で、暴漢に追いかけられていた娘お夏を救うが、清十郎を暴漢の一味と勘違いしたお夏の許嫁兵馬に斬りかかられる。 咄嗟に兵馬の一撃をかわす清十郎であったが、そのはずみで兵馬は崖下の海中へ転落してしまう。 重傷を負った兵馬を助けたのは、近くを航行中の土佐藩の御用船に乗っていた蝦夷の廻船問屋松前屋の主人とその許嫁の雪江だった。 顔に大怪我を負った兵馬は清十郎を深く恨むようになっていた。
偶然再会した二人は、またも斬り合いとなる。 兵馬の攻撃を再び退けた清十郎は、逃げる道すがら、川のほとりで悲歎に暮れている娘に出会う。 その娘は、松前屋との内祝言の場を抜け出してきた雪江だった。 雪江は、決して松前屋を嫌いではなかったが、養父の出世の道具にされるのを嫌がってこの結婚に乗り気ではなかったのだ。 清十郎と雪江は恋に落ちる。 だが、清十郎は、兵馬の謀略により無実の罪を着せられ、牢獄に入れられてしまう。 親友の坂本竜馬の助けで脱獄する清十郎。 しかし、雪江は松前屋に連れられて蝦夷の地へと去っていった。
時は流れ、鳥羽伏見の戦いの後のこと。 各地を渡り歩き江戸に流れ着いた清十郎は、かつて窮地を救ったお夏と再会する。 お夏は助けられて以来ずっと清十郎のことを想っていた。 だが、またしても清十郎の前に兵馬が現れる。
(補足/by風かをる)カテゴリ『長篇大ロマン』、「
ふり袖狂女」参照

