1 花の炎
(解題)
つばめ出版発行。 本編157ページ。 昭和36(1961)年3月頃に短編誌『怪談』の別冊として出版された。 貸本時代を代表する人気シリーズ「小島剛夕長篇大ロマン」の記念すべき第一作。
『書籍雑誌卸月報』に拠れば当初は「愛染の門」という題名で出される予定だった。 敵対せざるを得ない男達の友情と彼らを愛した女達の哀しみを描いた一編。 女心を震わす哀愁のロマンチシズムと艶やかな画風は第一作から絶好調。 女性読者のハートをしっかりと掴んだ。
(あらすじ)
隠し目付として城内の抜け道の秘密を守る喬四郎は、ある雨の夜、その秘密を探らんとする公儀隠密を捕えて愕然とする。 それは、恋人かおりであった。 恋愛と任務の狭間で苦しむ喬四郎であったが、結局彼は任務を優先し、恋人かおりを牢に繋いだ。
一年後、喬四郎はかおりの亡霊に悩まされていた。 喬四郎の妹織江に密かな恋心を抱く新参者の相楽三平は、喬四郎が苦悩の理由を語らぬことに不審を抱く。 三平は織江に自分の妹が一年前に行方不明になったことをさりげなく伝えるが、その妹とは実はかおりであった。
三平もかおりと同じく公儀隠密で、城内の抜け道の秘密を探らんがため、半年前に素性を偽って召し抱えられたのだった。 やがて、三平と織江は喬四郎も公認の相思相愛の間柄となるが、三平の任務遂行の日も近付いていた。 三平と織江の恋も、喬四郎とかおりの時と同じように、儚く散る運命にあったのである。
(補足/by風かをる)カテゴリ『長篇大ロマン』、「花の炎」参照

