画像はマンチュウ様提供(『漫画図書館青虫』にて撮影)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・
画像はマンチュウ様提供(『漫画図書館青虫』にて撮影)
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・
昭和35年11月発刊(S35/12?)
「おおっ・・・あなたは・・・あなたは・・・・・・」 その車夫は危うく車の梶棒を取り落とそうとした。河岸の柳の行きづりに、ふと呼びとめた声・・・それは昔そのまま忘れようとも忘れ得なかった人の姿ではないか!(口絵より)
立派な洋学者になり恋人の梢と幸せな人生を送るはずの恭次郎だった。しかし二度の試験の失敗が彼の人生の歯車を大きく狂わせた。親友の源之介と梢との仲を疑ってもいた。半ば投げやりになり時代の波に翻弄されてゆく恭次郎。
時は流れ車夫として昔に想いを馳せる恭次郎の元を訪れたのは梢と幸せに暮らしているはずの源之介だった。源之介と一緒になっても恭次郎を忘れがたく、今は病の床に臥しているという梢。見舞ってくれと頼む源之介の申し出を断る恭次郎。
梢との想い出の河岸を車を引きながら歩く恭次郎の目に梢の幻が・・・!そしてその同じ時刻、梢は息を引き取っていた。
恭次郎の元を再び訪れた源之介は仲間の車夫から恭次郎の死を知らされる。悄然と河岸を歩く源之介の目の前を白無垢の花嫁姿の梢を乗せた人力車が通っていった。その車を引いていたのは紛れも無く若き日の恭次郎だった!
雪は、さんさんと降り続いている・・・・
その雪の河岸のどこにも・・・・・・・・
わだち(轍)の跡はなかった・・・・・・
━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・━・
幼い頃の話です。虫や雑草が大好きでした。ムーンとむせ返るような草いきれが好きでした。舗装のされていない道路の雨上がりの匂いも今とは違っていました。近所には草ボウボウの原っぱがありました。八百屋さんで買ってきたキャベツによく青虫を見つけました。ほにょほにょと柔らかな感触が好きでした。転がすとくるっと身体を丸くする・・・飽きずに眺めていたものです。
青虫はやがて6帖一間の我が家の天井の隅で蛹になりました。あの蛹の形も好きでした。細い透き通った糸に身体を預け、ジッと動かない蛹。時間はとてもゆっくりと流れていました。ある朝起きると部屋の中に一匹のモンシロチョウがゆったりと舞っていたのです。
窓を開け、ひらひらと舞い上がってゆく蝶を見えなくなるまで見送ったあの日。「青虫」の中には風かをるの胸キュンの想い出がたくさん詰まっています。草の匂いと田舎の匂いと・・・そして二度と帰らない幼い日々と・・・。
| HOME |
Author:風かをる
その旅は昔々店じまいをした貸本屋さんから譲っていただいた数冊の「長篇大ロマン」から始まりました。
小島剛夕作品に魅せられてン十年。果てしない探求の旅が続いています。