
三洋社 定価150円 『忍風』別冊/忍者特集
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・流儀の蔭に(後恵二郎)
・忍者変貌図/陽の章(小島剛夕)30P
・忍者変貌図/蔭の章(久慈あきら)
・へまをするな(都島京弥)
・忍者飛龍 后(東田健二)
・コミツの漫画(山口ひろし)
【資料】
表紙、目次ともに「小島剛石」と表示されています。ただし本文は「小島剛夕」です。 特別な意味は無く、単なる誤植だそうです。(ご遺族の方より聞き取り) また、目次に「原稿到着順」と記載があります。 入稿の順番に載せていったのですね。 剛夕先生の原稿と久慈あきら先生の原稿が逆だったり、間に他の作家先生の作品が挟まったら大変でしたね。(笑)
根来忍者の陰虫は甲賀、伊賀の忍者たちを全滅させるという秘命を受けてまず伊賀の頭領「弾正」になりすまし潜入する。陰虫は変貌の術という恐るべき忍法を身につけていた。弾正を殺害し、その死面を写し取って弾正そっくりに化けることができるのだ。
弾正には「小笹」という幼い娘がいた。顔は父であっても幼心に陰虫に恐怖心を持つ小笹。小笹を警戒しながら陰虫は着々と伊賀の力ある忍者を葬っていく。しかし変貌の術にも弱点があった。精気を使いすぎると顔が崩れるのだ。小笹に崩れた顔を見られた陰虫はあわてて死面の隠し場所に行き再度変貌の術を使う。死面を顔に押し当てている場面を追ってきた小笹に見られ、小笹を殺そうとする。恐ろしい形相で詰め寄る陰虫に怯え小笹は沼に落ちてしまう。
父を呼ぶ小笹。沈み行く小笹を見つめていた陰虫は次の瞬間水の中に飛び込み小笹を救い上げていた。陰虫の変貌の術は顔だけではなく弾正の慈愛の心まで写し取っていたのだ・・・。
ここで「陽の章」は終わります。次のページから「蔭の章」(久滋あきら)が始まります。探求日誌でご紹介した『剣豪画集・1』の「幻法武芸帖」でも競作していますが、大変絵柄が似ています。久滋あきらは後年、忍者物やジャングル物などを少年誌に発表しますが、さらに剛夕先生に似ていきます。ある大手の漫画古書店でさえ久滋あきら作品の扉絵原画『忍者一番』を剛夕作品として展示していたほどです。
もっとも私も掲載誌で確認するまで剛夕作品として違和感は持っていませんでした。ただ、どこかで見たことがある作品だと気にはなっていたのです。古い作品を読み返す中でやっとこの『忍者一番』のもととなる作品(忍鬼・赤不動/第二話)を見つけ少しすっきりしました。
『忍者一番』という久滋あきら作品については後日、剛夕作品の『赤不動』のご紹介で触れたいと思います。